イルカのパフォーマンスはどうやって覚えさせる?イルカの調教について解説!

イルカのパフォーマンスはどうやって覚えさせる?イルカの調教について解説!海の生き物

水族館と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?

おそらく真っ先にイルカショーを思い浮かべるのではないでしょうか?

子どものころに初めて見たイルカショー。イルカたちのダイナミックなジャンプや、トレーナーとの息の合ったパフォーマンスに感動して、大きくなったらイルカのお姉さん(お兄さん)になる!と考えたことのある方も多いはず。

何を隠そう、私もそのうちの一人でした!(だけど私は魚担当になりましたが…)

さて、イルカショーを見て、どうやってイルカに芸を覚えさせるんだろうと疑問に思いますよね?

実際に水族館でもそういった質問を、沢山の方からいただきます。

青春スポ根漫画のように、トレーナーと二人三脚で厳しく辛いトレーニングを乗り越えている…訳ではありませんよ(笑)

この記事では、イルカのトレーニング方法について解説していきたいと思います。

もら
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海洋生物の飼育・解説業務を6年経験している「もら」がご紹介します。
東京海洋大学卒業。海洋生物と動物専門です。
趣味は水族館・動物園巡りです♪

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イルカに芸を教えるは間違い!?

「イルカにどうやって芸を教えるのか?」ということですが、トレーナー達はゼロから芸を覚えさせている訳ではありません。

どういうことかというと、元々自然界でもイルカたちがとる行動を「引き出して」あげているのです。

例えば、水上にジャンプする行動も、移動のときや狩りのときに普通にみられる行動です。

また、自然界でイルカは子どもも大人もよく遊びます。そういった行動を、うまく引き出してあげているだけなんですね。
(参考記事:野生のイルカはどんな暮らしをしているか

さらに、「芸を教える=調教(トレーニング)」と聞くとスパルタなイメージがあるかもしれませんが、イルカは私たち人間とは違い、嫌なことを我慢することはほとんどしません。

「楽しいことは好き」「嫌なことは嫌い」とはっきりしているのです。

そのため、調教で叱ったり叩いたりしようものなら、すぐさま逃げて好き勝手し始めてしまうでしょう。

イルカの調教の基本は、まさに「褒めて育てる」なのです!

ということで、イルカにとっては嫌々トレーニングをされている訳ではなく、トレーナーに楽しく遊んでもらっているという感覚なんですね。

対して、トレーナーはイルカが飽きないよう、楽しめるようにと、日々試行錯誤をしながらトレーニングを考えているというわけです。

イルカのトレーニング方法

さて、ここからは実際にどのようにトレーニングをしているのか、という話をしていきます。

トレーニングは、「望ましい行動をしたら報酬を与える。望ましくない、あるいは間違った行動をしたら報酬を与えない。」(専門用語でオペラント条件付けといいます。)という方法で行います。

ここでいう報酬にはエサ(魚)を用いているので、イルカはエサ欲しさにトレーナーの望む行動をするようになるということなんですね。

例えば、ショーで最も人気のある「ジャンプ」を覚えさせるには、以下のような方法をとります。(ここで紹介する方法は一例であって、水族館やトレーナーによって方法は変わります。)

イルカのトレーニング方法
イルカのトレーニング方法
  1. 先端が丸い棒(ターゲット)に触れさせる
  2. イルカがターゲットに触れたら、ターゲットを持ち上げる
  3. ターゲットを持ち上げる高さをどんどん上げていく。
  4. サインをつける
  5. ジャンプ完成

それぞれの段階で、正解の行動をしたらエサをあげることを繰り返すと、徐々にターゲットに触ったらエサもらえる、サインでジャンプしたらエサもらえるといった感じで覚えていくんですね。

ただし、ここでイルカに与える課題が難しすぎると、エサが中々もらえずにイルカが嫌がったり飽きたりしてしまいます。

「サインを出したらジャンプする」ということを目標として、細かく段階に分けて、一つ一つのステップをなるべく簡単にクリアできるようにすることで、モチベーションを保つんですね。

しかも、イルカも個々の性格や得手不得手があるため、イルカの個性に合わせたトレーニング方法を考えなければなりません。

一つ一つの芸をイルカたちに合わせて根気よく教えていく…。トレーナーさんたちの苦労を考えると、涙が溢れそうですよね。

また、こういったトレーニングを通して、イルカとトレーナーは信頼関係を培っていきます。

イルカはよく人を見るため、楽しいことを提供してくれる人や指示が分かりやすい人に対しては、びしっと構えてサインを待ち、全力でパフォーマンスをします。

対して、まだ信頼関係が築けていない新人トレーナーさんには、指示する前に勝手に動いたり、適当に力半分でパフォーマンスしたりと、小悪魔な一面ももっています。

私たちもそうですが、トレーニングの前提には「信頼関係」が大事なんですね。

まとめ

・芸を覚えさせるのではなく、自然界での行動を引き出している

・トレーニングの基本は「楽しませること」「褒めて育てること」

・トレーナーとの信頼関係が大切

遊ぶこと、楽しいことが大好きなイルカたちには、彼らが自ら積極的に取り組んでくれるようなトレーニングの工夫が必要です。

そして、そういった日々のトレーニング(遊び)が身体の健康を保つためにも重要なんですね。

水族館でショーを見る際には、どうやってイルカにトレーニングするか想像しながら見てみてくださいね!

☆イルカのことをもっと知りたい方へ。
遊ぶこと、楽しいことが大好きなイルカが野生ではどんな暮らしをしているのかも知っておくとさらに楽しむことができます。ぜひこちらの記事もご覧ください。

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その疑問はこちらの記事で詳しく解説しています。
イルカとクジラの違いとは?意外と曖昧なイルカとクジラの名付け方

(参考)「海獣水族館‐飼育と展示の生物学‐」編著:村上司、祖一誠、内田詮三

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