テレビや本では仲睦まじく2匹寄り添うペンギンの姿が写真や映像に移されることが多く、皆さんも一度は目にしたことがあると思います。
水族館でも、多くのペンギンが2匹寄り添い、羽繕いをしあったり、鳴き交わし合ったりする様子をよく見ることが出来ます。
そんな仲良しペンギンカップルにも、浮気や離婚など夫婦解消の危機は訪れるのでしょうか?
今回は、ペンギンの繁殖生態や、実際に起こったペンギンの恋のエピソードを紹介していきます!
海洋生物の飼育・解説業務を6年経験している「もら」がご紹介します。
東京海洋大学卒業。海洋生物と動物専門です。
趣味は水族館・動物園巡りです♪
ペンギンの恋愛事情
まず、一般的なペンギンたちの恋愛とはどういうものなのか紹介しますね。
ペンギンは「一夫一妻」といって、基本的には生涯同じペアで繁殖を繰り返します。
動物の7~8割が「一夫多妻」といってオス1匹に対してメス複数で繁殖することを考えると、とても誠実に思えますよね。(人間主観ではありますが。)
実際にどれだけペアの相手が長く続くかというのはペンギンの種類によっても異なります。
例えば、繁殖場所と生活場所が異なるアデリーペンギンは、繁殖期以外は夫婦別々に暮らしています。そして、繁殖地に着くとまず夫婦再開するところから始めるのですが、このとき、中々ペア相手が現れない場合には早々に見切りをつけて、新しいペアを作ることがあるんです。
それに対して、近い仲間であるジェンツーペンギンは、ずっと同じ場所で夫婦同居生活をするので、めったなことではペアを解消することはありません。
そんなわけで、前年度と同じ夫婦関係を次の繁殖期にどれだけのペアが維持しているのか調査した研究では、アデリーペンギンの番(つがい)維持率が62%であるのに対し、ジェンツーペンギンが90%と同じペンギンでもこれだけの差が出てくるのですね。
アデリーペンギンは約1/3のペアが一年で解消してしまうというと薄情に思えるかもしれませんが、ペア相手が離れている間に死亡している場合も考えられますし、4か月という短い繁殖期間の中で子どもを育て上げるには、一秒も無駄にできないという、已むに已まれぬ事情があるんです。
ちなみに、一番ペアの維持率が低いのはキングペンギンで、なんと3.75%しかないとのこと。
キングペンギンは産卵から子育てに13か月もの長い期間をかけます。1年目の繁殖は成功しても、2年目には繁殖に適した季節がずれてしまうため、必ず失敗し、3年目にまた成功という、特異な繁殖生態がペアの維持率に関係しているのかもしれません。
飼育員は見た!?ペンギンの恋のドラマ
ここからは、水族館で実際に見られたペンギンたちの恋のエピソードを紹介していきます。
まずは、市立しものせき水族館「海響館」で飼育している、「千兵衛(♂)」「ニーナ(♀)」「がっちゃん(♂)」「きのこ(♀)」という名前の4羽のジェンツーペンギンのエピソードです。
4羽の中で以前はがっちゃんとニーナがペアでした。そこへ千兵衛が間に入ってきて、がっちゃんからニーナを奪いに行ったのです。がっちゃんよりも一回り体が大きな千兵衛はケンカも強く、がっちゃんは逃げるしかありませんでした。
ケンカに敗れたがっちゃんはニーナとの仲を諦め、きのこにアプローチを始めました(あら!心変わりが早いこと!…とは思わないであげてくださいね)。きのこもがっちゃんを受け入れている様子で、ペアになれるかと思われたのですが、これをよく思わないペンギンが1羽。ニーナです。がっちゃんがケンカに負けてもニーナはがっちゃんのことが好きなのです。がっちゃんの隣にそっと寄り添おうとしますが、そうするときのこが怒り、ニーナときのこでケンカが始まります。ニーナときのこはまさに恋のライバルになったのです。
一方、がっちゃんとのケンカに勝った千兵衛は、ニーナへ気持ちを伝えようと何度もアプローチします。けれども、その度にニーナは逃げてしまい、千兵衛は少し離れたところからニーナを見つめることしかできません。
動物の世界は強いオスがモテると思われがちですが、必ずしもそうではなく元パートナーとの愛の絆も確かにあるということを感じるエピソードですね。
他にも、オス同士でカップルを作ることもまれにあるそうです。ただし、いずれは片方が求愛してきたメスと浮気?して、オス同士カップルの解消という悲しい結末になったとのこと…。
このようにペンギンの世界でも浮気や二股、同性愛や略奪婚など、様々な恋の試練があるんですね。
まとめ
・ペンギンは「一夫一妻」。基本的には生涯同じペアで繁殖を繰り返す。
・ペアの維持率は、ペンギンの種類によっても異なる。
・ペンギンの世界でも浮気や二股、同性愛や略奪婚などがある。
この記事で、ペンギンたちの生活がなんだか少し身近に感じられたのではないでしょうか?
ペンギンたちの恋のエピソードは、水族館の飼育員に聞けばびっくりするほどたくさん話が出てくると思います。
また、「もしかしたらあの2匹何かあるかも…?」という視点で、水族館でペンギンたちをじっくり観察してみると、恋のドラマが見えてくるかもしれませんよ。
水族館でペンギンを観察するときにもっと楽しくなる、ペンギンに関する知識をご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
(参考)
「ペンギンたちの不思議な生活」著者:青柳昌宏
それでもがんばる!どんまいなペンギン図鑑」監修:渡辺佑基
海響館HP ペンギン情報「もつれた恋の糸-ジェンツーペンギン-」
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