水中を飛ぶように泳ぐ、水族館の人気者「ペンギン」。陸上でよちよち歩く姿とのギャップがとても魅力的ですよね。
今日では、多くの水族館や動物園で飼育されているため、気軽にその愛らしい姿を見ることができるようになりました。
さて、ペンギンと聞くと、すごく寒い南極のような一面氷の世界で生活している様子を想像しませんか?
でも、水族館や動物園では、外の施設で飼育されている姿を目にするはずです。
これは、一体どういうことでしょうか?
この記事では、なぜペンギンを夏に外で飼育していても大丈夫なのか、また、ペンギンがどう暑さを乗り切るのか解説していきたいと思います。
海洋生物の飼育・解説業務を6年経験している「もら」がご紹介します。
東京海洋大学卒業。海洋生物と動物専門です。
趣味は水族館・動物園巡りです♪
夏に外でペンギンを飼育しても大丈夫なワケ
結論から言うと、そもそも外で飼育されているペンギンは、日本に近い温暖な気候の場所にすんでいる種類なんです。
例えば、日本で最も多く飼育されている「フンボルトペンギン」は、日本から見て地球のちょうど真裏あたりにある、南米のチリ・ペルーなどにすんでいます。
チリの年間平均気温は8~24℃ほどで、最高気温約30℃、最低気温約3℃と、日本とほぼ変わらない気候なんですね。
現在世界には、6属18種類のペンギンがおり、すべての種類が南半球の寒冷な海流も流れこむ海域にすんでいます。
しかし、そのうち南極にすんでいる、あるいは、一年のうちのどこかで南極に上陸するペンギンはというと、エンペラーペンギンを初め5種類ほどしかいないんですよ。
このような寒い地域にすむペンギンたちについては、水族館などで完全密封・空調完備の室内飼育施設で、15℃以下の室温で飼育されています。
一番暑い地域にすんでいるのは「ガラパゴスペンギン」で、名前の通り赤道上にあるガラパゴス諸島にすんでいます。
ガラパゴスの最高気温はなんと40℃!
ペンギン=寒い地域というイメージが強いですが、思っている以上に温暖な地域にいるペンギンも多いのです。
ちなみに、温暖な地域のペンギンは嘴(くちばし)の付け根や目の周りの肌が露出していたり、足首に羽毛がなかったり、スマートな見た目をしています。
対して、寒冷な地域のペンギンは嘴や足元が羽毛で覆われてもっさりしているため、どんな気候の地域にすんでいるかは見た目で予想できますよ!
夏はやっぱり暑い!ペンギンの暑さ対策
外で飼育されているペンギンは、元々日本と近い気候の地域の種類なので、外でもへっちゃら!という話をしてきました。
…がしかし、冷たい海に潜るために体にびっしりと保温効果抜群の羽根が生えているため、夏はやっぱり暑いのです!
水族館でも、日陰でだらけている姿や、顔が真っ赤になっていかにも暑そうなペンギンの姿を見ることができますよ。
そんな暑いときに見られる行動や、生理現象について解説します。
ペンギンの暑いときに見られる行動
・フリッパー(翼)をパタパタ仰ぐ
フリッパーには羽毛がほとんど生えていないため、外気の影響を受けやすくなっています。
そのフリッパーを仰ぐことにより、体温(血液の温度)を下げることができます。
・犬のように息をハァハァする。(パンディング)
体内の暑い空気を吐き、冷たい空気を吸い込むことによって、体内の熱を放出します。
・水に入って泳ぐ
夏は大抵気温より水温の方が低いため、水に入って体温を下げます。
水族館でも冬に比べると、明らかに夏の方が水に入っているペンギンが多くなりますよ。
・巣穴や日陰でうずくまる
日陰で過ごすことで、日差しによる体温上昇を防ぎます。
また、動くとそれだけ熱が発生してしまうので、腹這いになってじっとしています。
ペンギンの暑いときの生理現象
・足先やフリッパーなど、外気で冷えやすい部位へ血液が大量に流れるようにする。
なんとペンギンは、体の血液の流れを調節し、部分的に変更できる機能をもっているんです。
どういう仕組みかというと、弁の働きをする筋肉を動かして、外気の影響を受けやすいフリッパーや足、表皮などにより多く血液が流れるようにします。
暑いときにペンギンの顔が赤くなるのも、顔の血流が増えて血管が拡張しているからなんですね。
・対向流熱交換システム
外気に接している足やフリッパーから心臓に戻る静脈は、心臓から末端に流れる動脈の横を沿うように平行に走っています。
体の末端で冷やされた大量の血液(①の仕組みにより血液増量している)は、近くを通る動脈を冷やしながら、心臓へと戻っていきます。
・羽毛を筋肉で立てて、隙間から熱を逃がす
羽毛を筋肉で立てることが出来、羽根の隙間から熱を放出して体温を下げます。
暑いときに、ペンギンが羽根を立てて皮膚を露出させているので、スカスカの状態になっている姿が見られますよ。
また、上記の生理現象は、寒い時にも体温を維持するために使われています。
まとめ
・外で飼育されているペンギンは、もともと日本と気候が近い地域にすむペンギン。
・寒い地方にいるイメージが強いペンギンでも、実は気温30℃を超えるような暖かい地域に生息する種類もいる。
・南極のような極寒な地域~赤道直下の熱帯地域、海中などの厳しい環境を、様々な体温調節の仕組みを駆使して乗り越えている。
この記事お読み頂いたことで、ペンギンの見方が少し変わったのではないでしょうか?
ぜひ水族館でペンギンを見るときは、可愛いだけじゃない彼らのしたたかさに注目してみてくださいね。
水族館でペンギンを観察するときにもっと楽しくなる、ペンギンに関する知識をご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
(参考)
「ペンギンペディア」著者:デイビット・サロモン
「それでもがんばる!どんまいなペンギン図鑑」監修:渡辺佑基
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