私たちにはなじみ深い生き物であるイルカとクジラ。図鑑やテレビ、水族館などで見ることが出来るため、小さい子供でも名前を聞けばその姿をイメージできると思います。
では、イルカとクジラの違いは?と聞かれたらどうでしょうか?
なんとなく、イルカは小さくてすばしっこい、クジラは大きくてのんびりしているといったところでしょうか。
一度、小さい子どもが「イルカはクジラの赤ちゃん!」なんていっていたのを聞いたこともあります。イルカが大きくなったらクジラになるのでしょうか?
この記事では、イルカとクジラの区別について解説していきたいと思います!
海洋生物の飼育・解説業務を6年経験している「もら」がご紹介します。
東京海洋大学卒業。海洋生物と動物専門です。
趣味は水族館・動物園巡りです♪
イルカとクジラの呼び分けは体長4m?
「イルカ」と「クジラ」の関係について、一言でいうと“「クジラ」という大きなグループの中でも、最大体長が4mより小さい種類が「イルカ」”となります。
もう少し詳しく説明すると、クジラ目という大きなグループがあり、その中でさらに、口の中にクジラヒゲ(海水中の食べ物を濾しとる役割をもつ)を持つヒゲクジラ類と、口の中に歯を持つハクジラ類の2つのグループに分かれます。
この中で、ヒゲクジラ類全種とハクジラ類の中で4mを超える種類を「クジラ」、ハクジラ類の中でも4mより小さい種類を「イルカ」と呼び分けているのですね。
しかし、この4mというのはなんとも曖昧なもので、命名規約などではっきりルールとして決まっている訳ではありません。あくまで、一般的にはそういう暗黙のルールに従って呼び分けられていると思ってください。
また、「イルカ」「クジラ」の他に、コビレゴンドウやハナゴンドウなど「ゴンドウ」という名前がつく種類もいます。
コビレゴンドウやハナゴンドウなど は、体長が4m前後になることと、バンドウイルカなどのように口先が尖らず丸っこいという特徴があります。
英語でイルカを指す「dolphin」は、口先の尖っているものを指しているようなので、クジラというには小さいがイルカというには頭が丸い種類を「ゴンドウ」と名付けたのではと考えられますね。
イルカ?それともクジラ?じつは曖昧な名付け方
さて、体長4mを境目として呼び方が分かれるといっても、世界共通の正式なルールではないため、ちょうど4m前後の大きさの場合名付けが曖昧になることがあります。
例えば、4~5mになるシロイルカは、英語では「white whale(白いクジラ)」と呼ばれています。頭が丸っこく、口先も少し突き出してる程度なので、海外ではクジラと呼ばれているのかもしれません。
また、日本で「ゴンドウ」と呼ばれる種類のほとんどが、英語では「whale」となっています(ハナゴンドウ・カワゴンドウはなぜかdolphin)。
このように、日本と海外でもイルカとクジラの認識にズレがあり、名付け方が異なったりするんですね。
では、こういったイルカやクジラの名前はどうやって決められているのでしょうか?
生物の名前は、その生物の新種記載論文を出した人に命名権があります。
詳しく言うと、「今まで見つかっている種類とはこういう所が違うので、この生物は新種だ!」ということを、きちんと論文にまとめて最初に発表した人が、その生き物の名前を付けられるのです。
あまりにも突拍子もない名前は、混乱を招くからNGという暗黙のルールがありますが、イルカかクジラか曖昧な種類に名付ける場合、名付ける人の匙加減でどちらになるか決まってしまうのかもしれませんね。
まとめ
・イルカは「クジラ」と同じ仲間である
・ヒゲクジラ類全種とハクジラ類の中で4mを超える種類は「クジラ」、ハクジラ類の中でも4mより小さい種類は「イルカ」
・4m前後の大きさの場合名付けが曖昧になることがある
イルカとクジラは同じ仲間であり、私たちが思うほどはっきりとした区別はないということをお話してきました。
生き物の名前は私たち人が決めたものなので、人の数だけ様々な解釈があり、曖昧な部分が出てきてしまうんですね。
ただ、そうした部分も含めて、「どうしてこの名前になったんだろう?」「自分だったらどう名付けるかな?」と考えてみるのも面白いですよ!
☆イルカのことをもっと知りたい方へ。
野生のイルカってどんな生活しているかご存知ですか?こちらの記事で詳しくご紹介しています。
⇒野生のイルカはどんな暮らしをしているか
☆イルカというと水族館のイルカショーも人気ですね。イルカのジャンプは大迫力ですからね!
でも、イルカにどうやってあのジャンプとかの芸を教えているかご存知ですか?
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
⇒イルカのパフォーマンスはどうやって覚えさせる?イルカの調教について解説!
(参考)
「イルカ・クジラ学‐イルカとクジラのなぞに挑む‐」編著:村上司、中原史生、森恭一
「増補 鯨類海産哺乳類学」編著:加藤秀弘
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